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Hi, there. Glasgow

Study in Scotland

クレイジー・キャンピング 〜第一夜〜

 

 こんにちは。リックです。

 トランプ大統領誕生ですね。ブログで政治にはあまり触れないと決めているのですが、まあ、少しだけ・・・。

 

 今年は、前半のBrexit、後半のトランプと、なかなか衝撃的な展開が続いた年でした。ポピュリズムここに極まれりという感もありつつ、一方で、Washington DC、White Hallといったエリート主導の政治にNoが突きつけられているのかもしれません。私も自戒を込めて霞が関にいた頃を振り返ると、政策担当者(policy maker)は、ときに理屈では割り切れない部分に対して感度が低いというか、そのエネルギーを軽視する傾向がある気がします。残念ながら、ポピュリズム政策は、往々にして国民が期待したとおりには行かないものですが、もし良い点があるとすれば、ときに官治主義に陥りがちな政策担当者たちに、国民から冷水をぶっかける良い機会だということでしょうか。国民の方も、不満ばかり言っていても状況はよくはなりませんが、一方で、うまく言葉にできない不安をぶつけるには、選挙は適切な場であり、国民、政治家、それぞれが我が身を振り返る良い機会なのかなと、思います。

 

 さてさて、それはさておき・・・。

 

クレイジー・キャンプはじまる。

 

 「なあなあ。Hell Weeksが終わったらキャンプ行かないか?俺、車借りたよ!」

 

 Hell Weeksと呼ばれた課題祭りの最中、その提案は唐突になされた。折しも火曜日の恒例となっているドイツ人2名とのランチの最中、私の悪友であり、ドイツ連邦軍の士官であるJが・・・もういいや・・・ジュリアンが、嬉しそうに誘ってきたのだ。しかも4日間も行くという。もう一人のドイツ人、Pが速攻で「いや、寒いし・・・勉強したいし・・・」と拒絶したため、えーなんだよー、と言いながら、私に水を向ける。

 

 「リックは行くだろ?」

 「行かねえよ・・・。カミさんにぶち殺される。」

 

 そんなこと言わずに!俺がお願いしてるって言って交渉して!と頼み込むジュリアン。

 ・・・はっきり言おう。お前の名前は私の妻のブラックリストに掲載されている。無意味どころか、逆効果だ。

 

 

 「んー。まあいいんじゃないの?ちょうどケンブリッジにいるTさんか、パリにいるNちゃんに遊びに来てもらおうかと思ってたんだよね」

 

 しかし意外にも、前向きな発言をする妻。この瞬間、私の人生史上、トップ3に入る過酷でばかばかしい旅が始まったのであった・・・。

 

どうしても、森の中で眠りたい。

 

 結局、ジュリアンのフラットメートであり、若きコンピュータ技師であるメキシコ人、P・・・うん、もういいや・・・ペドロと、3人で授業の合間を縫い、金曜発・月曜着の強行軍にて、スカイ島にキャンプに行くこととなった。9割の英語と、日本語とドイツ語とスペイン語が3%ずつ乱れ飛ぶ珍道中が始まった。

 

 そもそも、授業後15時半に出発するはずの予定が、18時半出発になったあたりで、少し不安は感じていた。私が他のドイツ軍人のクラスメートから借りた巨大な軍用バックパックを背負って外に出たときには、既に外は真っ暗。近場の巨大スーパー、モリソンで食材を買いこんでいるあたりが、この旅行で一番平和で楽しい時間だった気がする。

 

 「・・・。何も見えないね。」(by ペドロ)

 

 グラスゴーから車で30分、第一夜を過ごす予定のLoch Lomond(ロモンド湖)に着いたものの、車のヘッドライト以外何も見えない道中が続く。既に携帯の電波は、→3G→2G→圏外、と文明ははるか彼方へ。時間は大体20時過ぎ。うん、でもまあテント張ってお酒飲んで、ちょうど良い時間くらいかな、と一安心していたが、キャンプ場ではなく、「どうしても森の中でキャンプがしたい」というジュリアン指揮のもと、一行を乗せた車は闇の奥深く奥深くへと突き進んでいく。

 

 ところがどっこい。

 すべての側道、林道は封鎖されていた。

 

 えーなんで!と車内で悲鳴があがること数回、地元のおじさんに聞いてみたところ、「あーん?当たり前だべ。こんな季節にここでキャンプするなんて、お前らアタマおかしいんでねえべか」。ひどい訛りで浴びせられる、そしてこの旅で何回も聞くこととなる、crazyという言葉。

 

 もういいんじゃないの?キャンプサイト使おうよ、とリックが数回指摘するも、「やだ。森の中でキャンプするんだ」と譲らないジュリアン。「まあなんとかなるんじゃない」とラテン系全開で楽天的なペドロ。結局、翌日の目的地であるOban(オーバン)へと進路をとりつつ、「いい場所があれば、そこでキャンプする」という、よく考えたかの顔をしていたが、完全に行き当たりばったりな作戦が提示された。そして、時間が過ぎ、23時半。

 

 「ひもじい・・・。お腹減った・・・。」(by ペドロ)

 

 ペドロのギブアップをしおに、車を路肩の広めな駐車場に止め、私の妻がもたせてくれた巻き寿司を食べることになった。本当はテントを張ってからの予定だったが、私も空腹の限界だったので、車内で広げることに。寿司、唐揚げ、卵焼き、ポテトサラダ、と輝く料理たちが、飢えた3人のおバカさんによって平らげられていく。うまい!リックの奥さん最高!と歓喜の悲鳴が上がるなか、私はそっと申し出た。

 

 「このあたりで、もうテント張って寝ません?」

 

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 Photo by Rick (All Copy Rights Reserved): Stars

 

 うーん。まあ、ちょっと外出て考えてみるか、ということになり、一同、車外へ。息を呑むほどの星空が広がり、また歓声。もうここでテント張るかあ、とふと振り返ったとき、一同は再度、息を呑んだのであった。

 

 振り返ると、そこは墓場だった。

 

 冗談みたいな話だが、そこには古めかしい教会と、ゾンビ映画もびっくりの墓場、十字架が群れをなしていた。

 読者のみなさまは、そろそろお気づきかもしれない。この日、結局オーバンまで私たちはドライブし、深夜の街を通り過ぎ、郊外のはずれにたどり着くまで、テントを張ることはできなかった。しかも、やっとの思いでジュリアンを妥協させて辿り着いたキャンプ場は・・・シーズン・オフで閉まっていた致し方なく、キャンプ場脇、海に面した駐車場に侵入し、やっとテントを張ることができた。時、既に午前1時。満点の星空の下、ライトを消し、ウイスキーを呑み、ワインを呑み、最後の寿司を食べる。

 

 まあ、これはこれで・・・。と、テントに入ってペドロと顔を見合わせて苦笑するが、なかなかに楽しいひとときだった。そして、にわかに始まった暴風と激しい雨の音を聞きながら、私たちは氷点下の世界で眠りに落ちたのだった。

 だがしかし、こんなものはまだまだ序の口であり、この旅がさらに過酷で、ばかばかしく、ぐだぐだになっていくことを、その時の私たちは知る由もなかった(いや、知ってたかもしんない)。

 

 

 

 

 ー翌朝ー

 「ちょっとあんたたち。ここ、私有地なんだけど。」

 

 

 

To be continued...

 

 

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 Photo by Rick (All Copy Rights Reserved): Crazy camping under the stars