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Hi, there. Glasgow

Go! Study Scotland!

クレイジー・キャンピング 〜第二夜〜

往訪記 留学生活 スコットランド
 
 
Previous 'Crazy Camping' (ちょっと海外ドラマ風)

 

    おバカなクラスメートに付き合って過酷な環境へと旅立ったリック一行だったが、早速トラブル続出。満点の星空を満喫し、気持ちよく寝込んだその場所は私有地だった!どうするリック。ほぼ君のせいだジュリアン。なぜリラックスしてるんだペドロっ!

 

また言われた。

 

    前夜の暴風雨が嘘のように、オーバン郊外は晴れわたっていた。しかし、景色を満喫するよりも先に目に入ったのは、仁王立ちするおばちゃんだった。私有地?(知ってたけど)まさかこんなに早く見つかるとは・・・街から離れてるから見つからないとタカをくくっていた。まあ、なんとかなるんじゃん?とニコニコするだけのペドロの横で、リックは必死に言い訳を考えていた。しかし、やはりあの男だけは、私の想像を遥かに超えていた。

  わたくし、ドイツ連邦軍のジュリアン・X中尉と申します!と、思い切り快活な笑顔で握手を求めに近寄っていくあの男。

 

 「いやあ。はじめまして。こちらの地主の方ですか?お会いできて光栄です!」

 「実は昨夜道に迷ってしまって、そこのキャンプ場は閉鎖されてますし、困っていたところ、お宅の駐車場のおかげで一夜を過ごすことができました。本当にありがとうございました!」

 

  すごいねジュリアン、とペドロも苦笑していたが、私も同感だった。すごい・・・快活な青年ぶりをアピールしつつ、既成事実(不法侵入)を緊急避難にすり替え、勝手に感謝している・・・。え?まあいいのよ、と地主のおばちゃんもたじたじと(一歩下がり)ニコニコし始める。私はこのとき、素直に感心した。確かにヨーロッパ人ってこういうところあるし、素直に事情を話して謝る、というか一歩進んで感謝してしまう、というのは大事だ。こういうニコニコと相手を惹きつける魅力は自分にはないと思う。ジュリアン、お手柄です。

 

 「へえ。あなたたち、わざわざドイツと日本とメキシコからキャンプしにハイランドまできたの。クレイジーねえ。

 

  あ、また言われた、crazy。 いや、ていうかおばちゃん、グラスゴーからですから。日本からじゃありません。火事さえ起こさなければいいから、気を付けてね、バーイ♪とおばちゃんはさっさと立ち去っていた。・・・まあ、関わり合いを避けたのかもしれない。

  その後、ガスクッカーで調理されたペドロお手製の本格トルティーヤに舌鼓を打ち、一行は一路、スカイ島へと舵を向けたのだった。(本当はこのときボヤ火事っぽいのを起こしていたのだが、その程度のことまで書いていると、この旅は終わらないので、割愛する。)時間は午前11時。これなら日が出ているうちにスカイ大橋(Skye Bridge)をわたり、スカイ島に着けるだろう。

 

どうしても、ヤカンでお湯を沸かしたい。

  ところがぎっちょん。

  この朝、ガスクッカーの火力が想定よりも弱く、というよりもハイランドの風が想定よりも強かったため、なかなかお湯が沸かなかった。お湯が沸かなくても、せいぜい困るのはコーヒーくらいのものなので、私は一向にかまわなかったのだが、やはりあの男は違った。

 

  「やだ。どうしてもコーヒー飲みたい。」

  「やかん買おう。」

 

  必要ないよ、早く出発しようよ、とせっつく日本人とメキシコ人には目もくれず、オーバンの街中でやかんを探すドイツ人。しかもなかなか、(彼の)お目がねにかなう一品はなく、軽めに昼食をとったり、やかんを探したり、やかんを手に取ったり、いいやかんとはなにか考えるうちに、時間は刻一刻と過ぎていったのであった。そして・・・。

 

  「・・・。何も見えないね。アゲイン」(byペドロ)

 

  ハイランドの紅葉、夕陽に歓声をあげていたのも束の間、一行は、再び漆黒の闇を車のヘッドライトで切り裂いていた。ちょっとカッコよさげに書いてみたが、要するにまた夜になってしまった。楽しみにしていたスカイ島だが、「黒」以外の要素がまるでない。集落を通り過ぎるときだけ、ガイ・フォークス祭を祈る巨大なかがり火を見かけるものの、基本的に真っ暗。たまにヘッドライトに照らされ、急に現れる羊や牛の顔が超こわい。そして、今日はキャンプ場でいいから、と妥協させてたどり着いたその場所は・・・シーズン・オフで閉まっていた。アゲイン。しかも、天候の悪さはオーバンの比較ではなく、強風→雨→晴天→霰(あられ)が20分ペースくらいで繰り返される。これは、強烈な場所に来てしまった。

 

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Photo by Rick (All Copy Rights Reserved): Sunset in Highland

 

どうしても森の中でキャンプファイアーがしたい。

  さらに、わたしたち3人の中に、どうしても森のなかでキャンプファイアーがしたい、というメンバーがおり、そして彼はなんと大学近くのケルビングローブパークで枯れ枝を集め、暖房で乾かしてきたという徹底ぶりだったため、キャンプファイアーができて、かつテントも張れる場所を探すことになった。幸い、ほかにもバカなことを考える人というのはいるようで、ほんの2時間くらい道に迷ったあと、キャンプファイアーを楽しんでいるグループを発見し、近くに落ち着くことにした。時間は午後11時、うーん、まあ許容範囲かな、と考えていたが、甘かった。

 

  「燃やす木が足りないから、切りに行こう。」

 

 

 

               ・・・(´・ω・`)??

 

 

 

  考えることを止めた私とペドロをよそに、ずんずんと周囲を探すジュリアン。そしてついに彼は閉鎖されたユースホステルを見つけたのだった。その近くには、かなりの本数の枯れ木が。見るとジュリアンの手にはハンディーのこぎりが握りしめられている。その後の数十分、何が行われたのかは、読者の皆様のご想像にお任せしたい。

 

  しかし、結局のところ木は足りず、ジュリアンは私を連れて、森の奥深くへと分け入り始めたのだった。これは正直かなり怖かった。アメリカやヨーロッパの広大な森林公園で、国道から数百メートルのところで遭難した事例というのは枚挙に暇がない。それだけ、森というのは方向感覚を奪うのだ。しかも真っ暗。軍隊経験がない、という理由でペドロはお留守番となったが、(というか、私もほとんどないに等しいのだけど)、ジュリアン的に心の安心につながるから、ということだった。ちなみに、私の方はちっとも安心できなかったことを申し添えたい。結局、外界にライトの光が届かなくなる寸前で私がストップ命令を出し、引き返すことになった。それにしても、血税で鍛え上げた軍人が、深夜に、他国で、木を切るためにその全能力を傾けていると知ったら、ドイツ国民はどう思うのだろう・・・。

 

  「あれ?こんなところに角材がいっぱい・・・」

 

  森の入り口付近で、よく見ると、雨をよけるシェルターが設置され、その下に、大量の角材が置いてある。袋には「BBQ Woods!」の文字。要するに、ほかのキャンパーたちは、(当たり前だが)木を切ったりはせず、ホームセンターで木材を買っているのだ。既に彼らは寝静まっている・・・。

 

  まあ、その、何ですか。

  何はともあれ、ついに、火は起きた。

 

  言うだけあって、上手に火をおこし、ステーキを焼き始めるジュリアン。既に手足の感覚はなくなるほど凍えていたし、時間も午前3時を回っていたが、意志あるところに成果は宿るというか、妙に感心してしまった。あんなに手間をかけたキャンプファイアーだったが、ステーキ肉にパワーを奪われ、数十分で鎮火してしまう。そしてあとは、闇と吹雪が支配する世界。ガタガタと震えながら、ウイスキーを飲みながらおしゃべりする。すでに、何が楽しいのか全く分からない

 

  そうして、気を失うようにして、一同は氷点下十何度の世界で眠りに落ちたのだった。

 

 

―翌朝―

 

 すさまじい雹(ひょう)が、テントを襲っていた・・・。

 


Movie01 for MSc Glasgow Studies

 

 

To be continued... 

 

※文中、触法行為をほのめかす表現がありますが、あくまで表現であり、実際には適法な範囲内の行動であることを申し添えます※

 

 

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Photo by Rick (All Copy Rights Reserved) :Sunrise after Crazy camping in Isle of Skye